退職後の手続きは、種類が多いうえに期限が短いものが混じっています。特に健康保険と年金は、退職日の翌日から数えて日数が決まっているため、退職前に段取りを決めておくと動きやすくなります。

まず全体像を確認し、そのあとで項目ごとに見ていきます。

退職後にやることの全体像

期限の目安は次のとおりです。日数は退職日の翌日から数えるのが基本です。

期限の目安 やること 窓口
退職日の翌日から14日以内 国民健康保険への加入 市区町村役場
退職日の翌日から14日以内 国民年金(第1号被保険者)への切り替え 市区町村役場
退職日の翌日から20日以内 健康保険の任意継続を選ぶ場合の申請 加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合)
家族の勤務先の定めによる 家族の健康保険の扶養に入る場合 家族の勤務先
離職票が届き次第 失業保険(雇用保険の基本手当)の申請 住所地のハローワーク
退職月により異なる 住民税の納付方法の切り替え 会社・市区町村役場
翌年の申告期間 確定申告(必要な場合) 税務署

健康保険

退職すると、それまでの健康保険の資格を失います。選択肢は次の3つです。

任意継続

退職前に加入していた健康保険を、退職後も継続する制度です。加入期間は最長2年で、申請期限は退職日の翌日から20日以内と短く設定されています(健康保険法第37条第1項)。

在職中は保険料を会社と折半していますが、任意継続では全額が自己負担になります。単純計算で在職中の約2倍になりますが、保険料の算定基礎には上限があるため、給与が高い人ほど上限に頭打ちされます。

保険料を納付期限までに納めないと資格を失う扱いになっているのが一般的です。また、途中で国民健康保険に切り替えたい場合の取り扱いは、加入していた健康保険によって異なるため、申請前に確認しておくと後で困りません。

国民健康保険

市区町村が運営する健康保険です。期限は退職日の翌日から14日以内です。保険料は前年の所得や世帯の状況、市区町村によって変わります。

倒産や解雇などで離職した人については、保険料が軽減される制度があります。対象になるかどうかは離職理由によって決まるため、離職票を持って市区町村の窓口で確認してください。

家族の扶養に入る

配偶者や親が加入している健康保険の被扶養者になる方法です。保険料の負担がない点が大きな違いですが、収入の要件があり、失業保険を受給する場合は、その金額によって扶養に入れないことがあります。

要件や必要書類は加入先の健康保険によって細かく異なります。手続きは家族の勤務先を通じて行うため、退職日が決まった時点で家族に伝えておくと進めやすくなります。

年金

厚生年金の資格も退職で失います。次の勤務先がすぐ決まっていない場合は、国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要です。期限は退職日の翌日から14日以内、窓口は市区町村役場です。

配偶者の扶養に入る場合は、第3号被保険者への切り替えとなり、手続きは配偶者の勤務先を通じて行います。

保険料の納付が難しい場合には、免除や納付猶予の制度があります。退職を理由とする特例の扱いが設けられていることもあるため、収入が途切れる見込みであれば、切り替えの手続きと同時に相談しておくと二度手間になりません。

未納のまま放置すると将来受け取る年金額に影響します。納められない事情がある場合こそ、窓口で相談したほうが確実です。

失業保険

雇用保険の基本手当のことです。会社から届く離職票を持って、住所地のハローワークで求職の申込みをするところから始まります。

受給できるかどうかは、被保険者期間の長さや離職理由によって変わります。金額や日数、給付制限期間の考え方は失業保険の受給ガイドにまとめています。

住民税

住民税は前年の所得に対してかかり、退職した年の分も納める必要があります。在職中は給与から天引き(特別徴収)されていますが、退職後は納め方が変わります。

一般的な取り扱いは次のとおりです。

  • 1月から5月に退職した場合:その年の5月分までの残額が、最後の給与や退職金からまとめて差し引かれるのが原則です。
  • 6月から12月に退職した場合:自分で納付書により納める普通徴収に切り替わるのが原則です。本人が希望すれば一括徴収も選べます。

転職先が決まっている場合は、転職先での特別徴収を継続できることがあります。取り扱いは会社によって異なるため、退職時に確認しておくと手間が減ります。

住民税は前年の所得に対してかかるため、退職した翌年に、収入が減っているのに高い額を請求されることがあります。金額の見込みは市区町村の窓口で確認できます。納付が難しい場合の分割などの相談も、同じ窓口で受け付けています。

所得税

年の途中で退職し、その年のうちに再就職しない場合は、会社の年末調整を受けられません。この場合、翌年に自分で確定申告をすることで、納めすぎた所得税が還付されることがあります。

年内に再就職した場合は、前の会社の源泉徴収票を新しい勤務先に提出すれば、年末調整でまとめて精算されるのが一般的です。

医療費控除や生命保険料控除などを受ける場合も申告が必要です。なお、納めすぎた税金の還付を受けるための申告は、確定申告の期間を過ぎてからでも一定期間内であれば行えるとされています。

申告の要否や期限は個別の事情によって変わるため、税務署または税理士に確認してください。

会社から受け取る書類

手続きに必要な書類は会社から交付されます。退職時に、いつ届くかを確認しておくと安心です。

  • 離職票(雇用保険被保険者離職票):失業保険の申請に使います。退職後に郵送されるのが一般的で、届くまで2週間程度かかることがあります。
  • 源泉徴収票:確定申告や転職先での年末調整に使います。
  • 雇用保険被保険者証:転職先に提出します。会社が保管している場合があります。
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書:年金の手続きに使います。会社が預かっている場合は返却を受けます。
  • 健康保険資格喪失証明書:国民健康保険に加入する際に求められることがあります。

会社に返すもの

返却漏れがあると、離職票などの発行が遅れることがあります。最終出社日までにまとめておきます。

  • 健康保険証(扶養家族の分も含む)
  • 社員証、入館証、名刺
  • 制服、貸与された備品
  • 業務で使用したパソコン、携帯電話
  • 通勤定期券(現物支給の場合)
  • 業務上の資料やデータ

本記事は一般的な情報提供であり、法律相談ではありません。個別の事情については、勤務先の就業規則を確認のうえ、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、または弁護士等の専門家にご相談ください。